厭世日記

不思議だったあの、精神科閉鎖病棟についてなんちゃって

四人掛けテーブルと支援制度について

ゆうこさんという女性がいた。 
彼女は40歳ほどのおだやかな女性で、一目見て優しいとわかる人だった。ショートカットの髪と、低めの身長だったので、なおさらそう見えた。
その隣に座っているのが、さなえちゃんだ。身長は私と同じくらい、32歳、167センチほどで肌は白く、眼鏡をかけている。猫背が印象的で、こちらは少し気が強そうだった。

私が開放ホールで夕食を摂ることを許されて2日目に、こちらから声をかけて一緒のテーブルで食事させてもらうことになった。四人掛けのテーブルに、ゆうこさんとさなえちゃん、もう一人のぞみちゃんという大柄の女性と四人で座った。みんな病気だ。

ここでの食事はそれぞれの病気や、身体に合わせて少しずつ違うが基本は和食で薄味の、健康的な食事だ。病院なので、健康的なのは当たり前だな。
ホールには一つ、壁掛けのテレビがあってどのテーブルからも見えるようになっている。チャンネルは希望があれば、みんなにことわって見ることができるが大してそんなこともなかった。17:45から食事は、ニュースが流れるのが常だった。

私はこの食事の時間が好きだった。
隔離部屋にいたときは、テーブルもないので床にお盆を置いて食べていた。もちろん一人だ。一言も喋らなかった。「自殺に失敗して閉じ込められ、今は床で食事を摂っている」ということが、本当に惨めで恥ずかしかった。ずうっと泣いていた。

今はテーブルにお盆を置いて、椅子に座って食べられる。テレビもあるし、私以外に人がいる。すごく嬉しいことだった。そんなだったので、人と会話すること自体とても有り難く思った。

ゆうこさんとさなえちゃんは躁鬱病だった。
二人は以前の入院中に仲良くなり、今回も偶然一緒になったらしい。年の差は気にせず、ゆうこちゃんさなえちゃんと呼び合っていた。私のこともちゃん付けで呼んでくれて、タメ口で構わないと言ってくれた。

のぞみちゃんは鬱病が悪化したため、今回は休憩ということで二週間を目処に入院中らしい。OD癖があり、今回の入院で四度目だと聞いた。
コテコテの名古屋弁が印象的で、よく喋る人だ。主に家族や自分のことを話題にする。
人見知りはしなさそうだけど、本人は人見知りだと言っていた。

四人の中ではのぞみちゃんがよく喋った。そこにさなえちゃんが返事をしたり、ゆうこさんや私が相槌を打つリズムができた。

そして三人は支援や手帳などの仕組みを詳しく教えてくれた。障害者手帳のことや、ハローワークの障害者枠について、自立支援医療。私は正式には病気ではない(境界性人格障害+気分変調症)にしても薬を飲み始めて三年目、何も知らなかったし教えてくれる人もいなかったためすごく勉強になったし、もっと多くの人が知るべきシステムだと思った。それらを教えてくれなかった医者やカウンセラーたちに疑問を持つほどだ。ありがたかった。そこで初めて知ったからだ。

「入院でもしなきゃなかなか知る機会がないよね」と言って、自分たちのことを教えてくれた三人には感謝している。
もしあなたが今、薬を飲んでいたり、病院にかかっていたりしたらなにか支援に該当するものがあるかもしれないので調べてみてほしい。自立支援は医療費負担を軽くしてくれるかもしれないし、障害者手帳を持つことで助かることがあるかもしれない。
就職が不安な時は、ハローワークに行って障害者枠について話を聞いてみるだけでも勉強になるかもしれないし。

私は今特別な支援は受けていないし、障害者手帳も持ってない。でも、多くの人を助けるシステムだということは知っているし、いつかお世話になるかもしれない。

退院するまでこの三人にはなにかとお世話になった、本当にたくさんお話を聞いたし聞いてくれた。開放病棟に移るときは泣いてくれたし、今でも心の支えだ。ありがとう。

この三人のことはもっと書きたい。
今回は支援もあるよと知った話。