厭世日記

不思議だったあの、精神科閉鎖病棟についてなんちゃって

開放ホールへの第一歩

次の日、私は閉鎖病棟開放ホールに出してもらうことができた。一言、「出たいです」というだけで出してもらえた。
あれだけ苦しくて重い部屋から、一言頼めば出してもらえるようになったということだ。これは大きな進歩だった。

看護師さんが鍵を開けてくれた。私はやっと大きな一歩を踏み出した。
開放ホールは広かった。正面に一つだけ本棚があり、本やマンガが少しだけ置かれていた。左手にはテレビがあり、なにかドラマが映されていたように思う。椅子が四つずつ配置された机が七セットあった。そこにまばらに人が座っており、興味深々で私を見つめていた。
なにより嬉しかったのは、風の音がしなかったことだ。ぼうぼうと聞こえていた風の音が、このホールではしなかった。

私はうきうきと本棚に向かい、マツコ・デラックス著「デラックスじゃない」を手に取った。嬉しかった。
明るい場所で、椅子に座って、本が読めることがとても嬉しかった。みんなが私をちらちら見ているが、それだって隣に人がいるということだ。
私は今、人の扱いを受けているのだ。
嬉しかった。

本当に、助かったと思った。

#自殺未遂 #厭世ガール